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名古屋地方裁判所 昭和46年(ワ)65号 判決

原告

清水清太郎

ほか一名

被告

真弓友博

ほか一名

主文

被告真弓友博は原告清水清太郎に対し一三七万四三五〇円、同清水知津子に対し金九五万八五〇〇円を支払え。原告らの被告真弓友博に対するその余の請求および被告佐藤武男に対する請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は、これを五分し、その三を原告らの連帯負担とし、その二を被告真弓友博の負担とする。

この判決は、原告らの各勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実

原告ら訴訟代理人は「被告らは、各自、原告清水清太郎に対し金三一五万八二〇一円、同清水知津子に対し金二一一万九八三一円を支払え。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、次のとおり述べた。

一  被告真弓友博は、昭和四五年八月八日午前一時四五分ごろ、海水浴のため、被告佐藤武男保有にかかる普通乗用自動車(名古屋五も九九九九)に清水孝子(当時二二才)を同乗させてこれを運転し、敦賀市二村地内の道路を時速約四〇キロメートルの速度で東北進中、該道路が右に急角度で湾曲しているのに、減速、徐行しないで漫然と右と同一の速度で進行した過失により、この湾曲路を曲がり切れずに右自動車を進路前方左側約一七メートル下の海岸に転落させ、その結果、孝子をして脳底骨折により同日午前四時一〇分に死亡させたものである。

二  右事故は被告真弓の自動車運転者としての注意義務を怠つた過失に基づくものであるから、同被告は不法行為者として民法七〇九条により、また被告佐藤は右自動車の保有者であるから、自動車損害賠償保障法三条により、いずれも孝子の右死亡によつて生じた損害の賠償義務がある。

三  本件事故によつて被害者孝子および原告らは次の損害を被つた。

1  亡孝子の逸失利益 金六二五万二六六二円

亡孝子は、かねてより株式会社マツダオート名古屋に事務員として勤務し、本件事故当時、同会社から一か月平均金二万七五〇〇円の給料と年間賞与金一四万三〇〇〇円の支給を受けていたから、これらを合せると、その年収は金四七万三〇〇〇円となるが、もし本件事故に遭遇しなければ、同人はなお、四一年間は就労が可能で、その間毎年少くとも右年収額から一か月あたり金一万五七〇〇円(昭和四三年賃金構造基本統計調査報告にもとづくもの)、したがつて年間金一八万八四〇〇円の生活費を差し引いた残額金二八万四六〇〇円程度の純益を挙げ得た筈であるところ、本件事故によつて死亡したため、この得べかりし利益を失つたが、右逸失利益の現在額を前記年間純益額と就労可能年数を基礎とし、ホフマン式計算法により中間利息を控除して計算すると、金六二五万二六六二円(284,600円×21.97=6,252,662円)となる。

2  亡孝子の慰藉料 金一〇〇万円

亡孝子が本件事故のため死亡したことにより同人の被つた精神的損害に対する慰藉料は金一〇〇万円を下ることはない。

3  原告ら固有の慰藉料 各金一〇〇万円

原告清水清太郎は訴外愛知マツダ株式会社の渉外課長を経て、同広田マツダ株式会社の庶務部長をしているもので、同知津子はその妻であるが、原告らは、その四女の孝子を中京女子高等学校を卒業後、株式会社マツダオート名古屋に事務員として勤務させ、孝子の姉たちが他家に嫁いでいつてしまつた後の末娘であることから、同人を一家団欒の中心として、原告らの愛情を孝子ひとりに注いでいたところ、計らずも、原告らは本件事故のため孝子を失い、親に先立つほどの親不孝はないの譬のとおり、すでに老境に入つた原告らを悲嘆のどん底に突き落して生きる気力さえも奪い取り、新しい仏壇にまつつた孝子の位牌の前から離れ難い思いにさせている。このように孝子の本件死亡が原告らに与えた精神的打撃は回復しようもないものであるが、いまこの損害を金銭で償うには、慰藉料として各金一〇〇万円ずつを必要とする。

4  原告清水清太郎の出捐によるその他の損害 合計金一〇三万八三七〇円

(一)  葬儀費用 金一五万円

(二)  遺体運搬費(本件事故発生地の病院から原告らの肩書住所地自宅まで) 金四万五八五〇円

(三)  初七日忌費用 金九万二五二〇円

(四)  仏壇購入費 金四五万円

(五)  弁護士費用 金三〇万円(ただし、そのうち金一五万円は着手金、その余は成功報酬)

四  以上の次第で、右1、2の孝子の損害額は金七二五万二六六二円であるが、同人の死亡により原告らは相続分に従つてその二分の一に相当する各金三六二万六三三一円ずつを相続したから、これに原告ら固有の右3、4の損害を合算すると、原告清水清太郎の損害総額は金五六六万四七〇一円、同知津子の総損害額は金四六二万六三三一円となるが、原告らは自賠責保険により金五〇一万三〇〇〇円を受領したので、その二分の一に相当する各金二五〇万六五〇〇円を右各損害総額からそれぞれ控除すると、控除後の損害額は、原告清水清太郎が金三一五万八二〇一円、同知津子は金二一一万九八三一円となる。

五  よつて、被告らに対し、原告清水清太郎は右損害金三一五万八二〇一円、同知津子は右損害金二一一万九八三一円の連帯支払を求める。

以上のとおり述べ、

被告らの主張に対し、

被告らの主張事実中、原告清水清太郎が被告真弓の父源一から本件事故による損害賠償の一部として金二五万円を受領したことは認めるが、その余は争う。と述べた。〔証拠関係略〕

被告ら訴訟代理人は「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求め、答弁および被告らの主張として、次のとおり述べた。

一1  原告らの請求原因事実第一項中、本件事故の発生について被告真弓に原告ら主張の湾曲路(右カーブ)において、減速、徐行しないで漫然と右と同一速度で進行した過失があることおよび本件事故車が被告佐藤の保有であることを除き、その余は認めるが、右除外部分は否認する。すなわち、被告真弓としては右カーブでブレーキを踏み、減速、徐行したけれども、ハンドルが切り得なかつたものである。

2  同第二項中、本件事故が被告真弓の運転者としての注意義務を怠つた過失に基づくことおよび同被告が民法七〇九条により孝子の本件死亡による損害の賠償義務を負うものであることは認めるが、その余は否認する。すなおち、被告佐藤は本件事故車を右事故より一年以前に訴外滝川豊行に売渡し、爾来、右滝川が右自動車の保有者として毎日運転していたもので、右事実は職場を同じくしていた孝子も熟知していた。したがつて、被告佐藤は右自動車の保有者ではないから、孝子の本件死亡による損害の賠償義務はない。

3  同第三項の1中、亡孝子が本件事故当時株式会社マツダオート名古屋の事務員であつたことは認めるが、同人の就労可能期間を除き、その余は不知、右除外部分は争う。すなわち、亡孝子の就労可能期間は二二才からせいぜい五五才までである。

同2は争う。

同3中、原告清水清太郎の職歴、地位、原告らの身分関係および亡孝子が前記株式会社マツダオート名古屋の事務員であつたことは認めるが、その余は争う。

同4は不知。なお、(四)の仏壇は耐久財であり、死者本人のためだけではなく、遺族のためにも使用され、利益が将来に残存するものであるから、その購入費まで損害として請求できるとすれば、不当に利得することになり、公平の観念に反するというべきである。仮に、仏壇購入費が本件事故と相当因果関係にある損害としても、その支出は社会通念上相当と認められる限度においてのみ賠償請求できると解すべきであるから、本件の場合のように金四五万円の支出は被害者の年令、職業、社会的地位等の事情を考慮すれば、高額に過ぎる。

4  同第四項中、原告らが自賠責保険金五〇一万三〇〇〇円を受領したことは認めるが、その余は争う。

二  被告らの主張

1  亡孝子の好意同乗による過失相殺

かねてより敦賀方面に釣りと海水浴に行くことに決めていた亡孝子および被告真弓を含む総勢九名の者たちは、昭和四五年八月七日午後一〇時ごろ、株式会社マツダオート名古屋黄金営業所に集合のうえ、本件事故車を含む三台の自動車に分乗し、敦賀方面に向けて出発した。本件事故車にはその所有者の前記滝川豊行、亡孝子および被告真弓の三名が乗車し、最初は滝川が運転した。翌八日午前一時ごろ、敦賀の松原公園先の釣り場に到着したので、滝川が下車し、同所が適当な釣り場かどうかを確めに行つている間、被告真弓が右事故車をUターンさせたうえ、運転席に着いたままでいたところ、滝川らの相談により結局同所から引き返すことになつたことから、被告真弓がそのまま運転し、滝川は助手席に、亡孝子は後部座席に乗つて本件事故現場に至るや、突然、崖から転落し、孝子は死亡したが、被告真弓と滝川はほとんど無傷であつた。

ところで、被告真弓は、かねて前記株式会社マツダオート名古屋の本社に勤務していたものであるが、職場で知り合つた滝川から同人のかつての勤務場所の前記黄金営業所の同僚と一緒に釣りと海水浴のためのドライブ旅行に行かないかと誘われたところから、同被告がこれに同意したものである。右旅行は黄金営業所が企画したものではなく、主として同営業所の同僚が集まつて行つた私的なものであり、それに要する費用もすべて平等負担のいわゆる割勘であつた。そして、被告真弓と亡孝子はかねてから一面識もなく、両者は前記のとおり黄金営業所に集合した時が初対面であつたものである。

以上の事実からしてみれば、亡孝子は、本件事故車に関していうならば、その運行利益を取得していたものであり、運行供用者の地位を帯びるといつても過言ではなく、そうでなくても、少くとも好意同乗者であるから、損害額の算定上は、少くともその三割は過失相殺の法理を準用して減額されるべきである。

2  損益相殺

被告真弓の父源一は昭和四五年一〇月七日原告清水清太郎に対し本件事故による損害賠償の一部として金二五万円を支払いずみである。

以上のとおり述べた。〔証拠関係略〕

理由

一  被告真弓友博か昭和四五年八月八日午前一時四五分ごろ、海水浴のため、普通乗用自動車(名古屋五も九九九九)に清水孝子(当時二二才)を同乗させてこれを運転し、敦賀市二村地内の道路を時速約四〇キロメートルの速度で東北進中、該道路が右に急角度で湾曲している箇所で、同被告の過失により、同所を曲り切れずに右自動車を進路前方左側約一七メートル下の海岸に転落させ、その結果、孝子をして脳底骨折により同日午前四時一〇分に死亡させたものであることは当事者間に争いがなく、〔証拠略〕を総合すれば、本件事故発生の原因となつた被告真弓の過失の内容は、同被告が右事故現場の右に急角度に湾曲している箇所を旋回、通過しようとした際、このように危険な道路の状況に応じて、あらかじめ減速、徐行し、ハンドルの操作を確実にするなどして安全に運転しなければならないのに、該道路に不馴れなことも手伝つて、この注意義務を履践しなかつたものであることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

二  そうすると、本件事故は右事故車を運転した被告真弓の過失によつて惹起されたものであるから、同被告は不法行為者として民法七〇九条により、孝子の本件死亡によつて生じた損害を賠償すべき義務があることはいうまでもない。

ところで、原告らは、原告佐藤は右事故車の保有者であると主張し、〔証拠略〕(自賠責保険金支払請求書)の保有者欄には被告佐藤の住所、氏名の記載がなされているけれども、〔証拠略〕によれば、本件事故車はもと被告佐藤の所有であつたが、本件事故前の昭和四四年一二月ごろ訴外滝川豊行が被告佐藤から右自動車を代金二八万円で買い受け、そのころその引渡しを受けて以来、本件事故当時までもつぱら同人の用途にこれを運行、使用してきたもので、同じく右事故前の昭和四五年五、六月ごろ自動車損害賠償責任保険には同人名義で、またいわゆる同任意保険にもそのころ同人において保険料を一部負担して勤務先会社名義でそれぞれ加入を了したが、自動車登録上の所有者名義の変更(移転登録申請)手続を怠つていた間、本件事故の発生をみ、したがつて、右事故当時においては、右登録上、旧所有者の被告佐藤の名義が残存していたに過ぎないことを窺知するに足りるから、甲第六号証に右記載のある一事をもつてしては、被告佐藤が本件事故当時右事故車を保有していたことの証拠とはなし難く、その他に右事実を認めるに足りる証拠はなく、そうだとすると、被告佐藤を自動車損害賠償保障法にいわゆる本件事故車の運行供用者として同被告に右事故のために生じた損害の賠償責任を負わせるわけにはいかない。

三  よつて、次に本件事故によつて生じた損害額について判断する。

1  亡孝子の逸失利益

〔証拠略〕によれば、亡孝子は、中京女子高等学校を卒業のうえ、株式会社マツダオート名古屋に事務員として勤務(亡孝子が本件事故当時右会社に事務員として勤務していたことは当事者間に争いがない。)し、本件事故当時、一か月平均金二万七五〇〇円の給料のほかに、六月と一二月の年二回にそれぞれ二・六月分ずつの賞与合計金一四万三〇〇〇円程度の支給を受けていたから、右給料と賞与を合算すると、同人の年収額は金四七万三〇〇〇円程度となるが、もし、本件事故に遭遇しなければ、同人は少くとも五五才までなお三三年間は就労が可能で、その間は少くとも毎年右年収額と同程度の収入を得ることができ、したがつてこれからその二分の一に相当する年間の生活費を差し引いた残額金二三万六五〇〇円が同人の一年間の純益であることが認められる。されば、亡孝子は右就労可能の三三年の期間中は引き続き一年につき少くとも右金二三万六五〇〇円の割合による利益を挙げ得たはずであるのに、本件事故によつて死亡したため、この利益を喪失し同額の損害を被つた筋合であるが、いま、ホフマン式計算法により右期間の中間利息を控除して計算すると、その額は金四五三万円(236,500×19.1834=4,536,874.1 一万円位未満の端数切り捨て)となる。

ところで、被告らは、孝子は被告真弓運転の本件事故車の好意同乗者であるから、本件損害額の算定上は、少くとも三割は過失相殺の法理を準用して減額すべきであると主張し、亡孝子が被告真弓運転の本件事故車に同乗中に右事故に遭遇したものであることは冒頭一に記載のとおり当事者間に争いがないけれども、そもそも本件事故は、右一で認定したとおり、被告真弓が右事故現場の危険な急カーブで、右道路に不馴れなことも手伝つて自動車運転者としての安全運転義務を怠つた一瞬の過失行為の結果発生したものであつて、同乗者など第三者の言動による寄与、加功の余地の極めて乏しい性質のものであるのみならず、〔証拠略〕によれば、亡孝子は、本件事故車に同乗中、運転者に対し、無理な運転をしないよう話しかけ注意を喚起したことがあるばかりでなく、右事故発生時は、深夜で事故車の後部座席で仮眠していたことが認められ、したがつて、亡孝子の右同乗の事実を、被告真弓の過失と同一視することは到底できないのはもちろん、これを過失相殺すべき過失とみなし得ないが、ただ後記慰藉料算定の際にはしんしやくすべき一事情として適宜考慮して然るべきものといわねばならない。

2  亡孝子の慰藉料

亡孝子が本件災厄に遭遇し、たちまちにして一命を失うに至つたこと、その他本件証拠にあらわれた諸事情に同人が被告真弓運転の本件事故車のいわゆる好意同乗者であることをあわせしんしやくするときは、亡孝子が右死亡により被つた精神的損害に対する慰藉料としては金八〇万円をもつて相当と認める。

3  原告ら遺族の慰藉料

〔証拠略〕によれば、亡孝子は、原告ら老令の夫婦の末娘で、前記のとおり高等学校を卒業後、株式会社マツダオート名古屋に就職したが、家庭にあつては、孝子の兄姉らのほとんど全部が独立して別居したり、他家に嫁いだりしていることから、原告らは、孝子に一層の愛情を注いでいたところ、本件不慮の災厄のため、突然、孝子を失つたものであることが認められ、原告らの悲しみは如何ばかりか察するに余りあるが、このことに本件証拠にあらわれた諸事情および亡孝子が被告真弓運転の本件事故車のいわゆる好意同乗者であることをあわせしんしやくするときは、原告らが孝子の本件死亡によりそれぞれ被つた各精神的損害に対する慰藉料としては各金八〇万円をもつて相当と認める。

4  葬儀費用その他の損害

〔証拠略〕によれば、原告清水清太郎は、本件事故後、亡孝子の遺骸を右事故発生地の敦賀市の病院から原告らの肩書住所地自宅まで遺体運搬用の特殊霊柩車で運搬し、その費用として金四万五八五〇円を、孝子の葬儀の費用として初七日忌の分を含めて少くとも合計金二二万円を、孝子をまつるため新規に仏壇を購入しその費用として金四五万円をそれぞれ支出したことが認められるから、これら亡孝子の遺体運搬費金四万五八五〇円、葬儀費用(初七日忌分を含む)金二二万円、仏壇購入費のうち金二〇万円、以上合計金四六万五八五〇円だけは本件事故と相当因果関係にある費用として原告清水清太郎の損害にあたると認めるが、その余は右事故と相当因果関係のある損害とは認められない。

5  保険金等の受領と右控除後の損害額

以上1、2の亡孝子の損害額は合計金五三三万円であるが、原告らが亡孝子の父母であることは前記3に認定したとおりであるから、孝子の本件死亡により、原告らはその相続人として法定相続分に応じ、その二分の一に相当する各金二六六万五〇〇〇円ずつを相続したことになる。そしてこれに原告ら各固有の右の3、4の損害を合算すると、原告清水清太郎の損害総額は金三九三万〇八五〇円、同知津子のそれは金三四六万五〇〇〇円となるが、原告らが本件事故により自賠責保険金五〇一万三〇〇〇円を、原告清水清太郎が被告真弓の父源一から右事故による損害賠償の一部として金二五万円をそれぞれ受領したことは当事者間に争いがないから、右各損害総額から原告清水清太郎については右自賠責保険金の二分の一に相当する金二五〇万六五〇〇円と右真弓源一からの受領金二五万円の合計金二七五万六五〇〇円、同知津子については右自賠責保険金の二分の一に相当する金二五〇万六五〇〇円を各控除すると、控除後の損害額は、原告清水清太郎が金一一七万四三五〇円、同知津子は金九五万八五〇〇円となる。

6  弁護士費用

〔証拠略〕によれば、原告らは本訴の提起、追行を弁護士鬼頭忠明に委任し、原告清水清太郎において同弁護士に着手金として金一五万円を支払い、委託の目的を達したときはさらに成功報酬として金一五万円を支払う約束をしたことが認められ、しかして、本件事故による損害賠償として被告真弓が原告らの請求をたやすく認容するものでないことは本件訴訟の経緯に照して明白であり、事案の内容、訴訟の経過、弁護士費用を除くその余の前記認容損害額その他本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、右報酬金額のうち、金二〇万円を本件事故と相当因果関係にある弁護士費用として原告清水清太郎の損害にあたると認めるのが相当である。

四  以上の損害額を合計すると、被告真弓が本件事故による損害賠償として原告清水清太郎に支払うべき金額は金一三七万四三五〇円、同知津子に支払うべき金額は金九五万八五〇〇円となるから、原告らの本訴請求は、被告真弓に対し右各金員の支払を求める限度で正当として認容するが、同被告に対するその余の請求および被告佐藤に対する請求はいずれも失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条一項但書、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡村利男)

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